患者さんの声



●胃カメラ体験記 (40歳代 男性)


3月8日人間ドック。検査後、値には全く問題ないことを問診の先生より聞かされる。いつもの検診ならここでニコニコしながら「今後も成人病に注意しながら生活してくださいね」と帰されるところなのだが、その日は違った。
言いにくそうに最後に、おもむろに写真を取り出した先生
「これまで胃透視で何か指摘をうけたことがありますか?」
「再検するほどの指摘はうけたことありません」と私。
「食道を何かが圧していて、通りにくくなっているようですね」
「どういうことですか?」
「悪いものがいたらいけませんからカメラをのまなければなりませんね。紹介状を書かなければなりません。どこがいいですか」
(ガーン…えー、任意じゃないの?なにかあったらいけませんから一度カメラのんでみますか?なら任意検査だろうけど…予断を許さないくらいに悪いものが出来てるってことなの?がん?4月から息子が高校入学決まったところだし、娘も中学だしどうしよう。生命保険もケチらずに高いのにしとくんだった。)
「胃カメラのんだことありますか?」
「ありません。反射がきついほうなので出来れば苦しくないほうがいいんですけど」
「それじゃいくつか御紹介します。こうちクリニックさんはどうですか?
「仕事柄、存じている先生です。ぜひそちらにお願いします。いつごろまでにいけばいいですか?」
「早いほうがいいと思います。1週間以内ぐらいにいってみてください」
そんなに急ぐのか・。逃げて帰りたかった。
追い打ちをかけるように、大きなレントゲン袋と紹介状を渡された。

事実なんだ。

3月は仕事が忙しく、てこれからほとんど時間が取れる日が無いのにな。でもとにかく電話しないと。悪いものがみつかっても、単身赴任だから高知で入院とかOPとか言われても家族もこまるよなー。検査結果が悪かったらすぐに入院だろうか?帰省先の病院に紹介状書いてもらうほうがいいのかな。よりによって、食道??よくわからないけど、消化管OPは管の途中の病気より、入り口と出口の方が再建がやっかいっていうしな。どうせならまだ胃のほうがよかったかも。会社にも激務で胃がやられましたって言う方がよさそうなきがするし‥。
などなど頭にうずまきながら、なんで人間ドック受けちゃったんだろ。3月の忙しい時期だしやめときゃよかった。無視してやっぱり行くのやめようかな。第一、カメラのむのって怖いし…。

意を決して予約の電話をかけた。一度よそへ間違い電話をかけてしまった。動揺がまだ消えてない。
「検診で紹介を受けました。電話だけでも予約できますか」
優しい声で受けていただくことができて少し安心した。しかも自分の都合だけで2回も時間の変更をしてもらったが、問題なく変更してもらえたことは助かった。
「前日の夜は9時から絶食です。それから、楽に眠ってする検査を希望でしたら、承諾書用に認印を持ってきてくださいね」

検査の日は出張先から朝一番で飛行場についてすぐの予定となった。

検査まで約1週間だ。…いつもより胃の調子が悪い気がする。不摂生してるからちょっと気をつけないとと普段なら思う程度なのに。腹がへっただけでも、腹いっぱいでげっぷが出ているときでも、なんでも悪い方に考えてしまう。胃のありかがわかる気がする。いつも使い慣れた臓器なのに。その位置さえ気にしたことが無いのに。ある朝冷たい水を飲む。食道を流れる冷水がいつもはさっぱりして気持ちいいのに、なにか通過していく流れまで刺激的に感じる。気のせいだよな…。好きなおでんでさえ、あんまり熱いものを食べると食道を刺激して、なにか余計に症状を悪くしちゃいけないから冷まして食べなきゃ。それから、からしを沢山付けるのもやめておこう。きっと刺激物はあまりとらないほうがいいよな‥。検査の時だけ節制してもしょうがないけど、つい、どろなわ式に取り繕ってしまう‥。

前日もやっぱり出張先の仕事仲間と9時まで飲んでいた(検査前夜にもかかわらずすみませんでした)。深酒はもちろんやめて、みなに事情を説明しサラダとかしわをつまんだ。
朝が来た。水分もあまりとっていないので喉が渇く。仕事のストレスも昨日からまた増えた。そのうえ低気圧の接近で高知行きの飛行機が揺れるって!!胃の居場所が、ますますおなかの中ではっきりしてきた。俺の胃にこれ以上ストレスかけるのはやめてくれーーーーー。このあとすぐ胃カメラのまないといけないんだぞーーーー。

検査がはじまった。青いジュースのようなものを飲んでから右を下に横になった。別に術衣に着替えたりすることもないんだ。ほぼそのままの格好で左手を出した。静脈から眠くなる薬をいれるらしい。
「これから眠くなる薬をいれますから気分が悪くなったら言ってくださいね。それから、目が覚めたらナースコールを押してく…………」
ちょっと寝てたみたいだ。何か夢を見ていたが内容は思い出せない。これから検査が始まるんだろうか?あれ?最初に口にいれていたマウスピースがない。左手の時計を見た。ちょうど1時間がすぎていた。あれー、しらないうちに終わってる。先生に、せめて最初にお願いしますと挨拶をしないといけないと思ってたのに。眠っている間にそそうはしなかったろうか?服を着るために立ち上がった。たしかに少しふらつきはあった。ちょうど、夜中におしっこで目が覚めてぼんやり厠にむかうときの感じと一緒だ。

診察室に呼ばれた。結果を伺うまでちょっとどきどきする。
「なにも異常はありませんでしたよ」
よかったーーーー。先生の顔が神様に見える。この1週間あまり、宝くじがあたってしまって海外旅行にいって、ベンツ買ってそれからどうしようかと妄想している以上にいろんな心配をしてしまっていたけど、杞憂だった。
検査自体も痛くもかゆくもないうちに終わってしまった。やっぱり健康っていいな。こうなるとわかっていたら、もっと早くどうにか時間を作って胃カメラしてもらったらよかった。
今夜はまた飲むぞーーーーー食うぞーーーーーー。